「深知今日事ーふかくこんにちのことをしるー」

「声と生き方の関係」

声を聞けば
だいたいのことがわかります。
いえ
頭を通りぬける余計な情報がないだけに
その人の「本質的な多くの情報」をすっと、あやまたず感じることができる気がしています。

先ほどまで、
もうすぐ始まるプロジェクトの打ち合わせをしており
その流れで、
企画の中心となる方のプレゼンを短くコーチングさせていただいたんですが

この方は声量十分。
勢いのある張りのある声で、その勢いの通りの元気な「語り」をなさいます。
部屋の、そして広い会場のどこにいても
この方の声が「聞こえない」ということはまずないでしょう。
けれど、

今日聞いて感じたのは
「聞こえるけれど、届かない」。

5メートル前に座るわたしの耳に、声はしっかりと聞こえるのです。
大きいくらい。
でも、その「話していること」は体の中に入ってこない。
私の体の50センチくらい前でストン、と止まってしまう。
…なる~。
この方らしい。そうかそうか。
でも、
これでは、メンバーの「心」は動かないかも。
「共感」「感動」は起きない。
「ああそうですか」「いいこと言ってますね」的な
頭での理解で終わってしまうでしょう。

この方の立場上
ず~っと「ぐっ」とふんばって、時には強く、皆の前に立って
「旗を振り続けてきた」その長い長い時間と、その陰に隠れた「思い」を
感じつつ。

「わたしの胸部にご自身の声がすぅと染み入って
そのままゆっくりと、体を抜けてここまで(と、具体的距離を示し)
届くように声を出してください。出すんじゃなくて、丁寧に『届ける』んです」


ジェスチャーを添えてお願いしました。
すると、さすがです。慣れていらっしゃる。
瞬間、「あ!」と納得。
声のトーンが変わり、話す速さが変わり、視線の配り方
手を動かす速さまでが変化。ゆっくりと、やわらかく。

先ほどと、同じことを話しているのに
もう、その「言葉が体に入ってくる」度合いは格段の差です。

無理に熱いシャワーを浴びせられそうな先ほどの感じから
ぬるめのお湯に、ゆっくりと、じっくりと浸かって
細胞の隅々まで暖かさが染み入るのを待つような、そんな声と意識に
変化していました。
「ああ、届き始めたな」と実感。
ここまでわずか5分。
人の「イメージ力」とはすごいものです。

声の出し方を変えることによって
この方の「その場をどう作るか」「どう作れば、もっともメンバーのためによいのか」
という意識までが
体感覚レベルで変化したのが感じられました。

声の出し方には、
大きくざっくりと言うと、その人の「生き方の癖」が刻まれている、と感じます。
思考パターン、ビリーフ(こうだと信じていること)
…それら、その人がずっと続けてきた
「生きるための戦略」があり
そのパターンにあった体の使い方、筋肉の使い方が体に染みつきます。
そして、声は、体という骨と筋肉の集合体を使って出すわけですから
声にはその「癖」が色濃く出てくる、と感じるのです。

ですので
逆から言えば「声を開発する」ことで
自分の中に隠れているけれど、(ちゃんとあるけれど)
まだ現れていない(育っていない)特質を開花させることができます。

わたしがこれまで出会った「声が出ていない」人は
たいてい
軸が弱い、芯が弱い、自分を信じていない、自分に規制をかけている…
などの状態にいらした気がします。
が、「自分の本当の声」が出始めると
自然といろんな「軸」が合わせて太くなってくる。
不思議ですが。

また
「強さ」「やわらかさ」「自由さ」…
もう自分にあるけれど、もっとそれを発揮したい、という「性質」があるときに
声の表現力を伸ばすと、だいたいにおいてそれらも
もっと大きく開発されます。
自分の殻、限界を超えるのに、「声を開発する」というのは
良い手だなと思うのです。

これら
何か裏付けがあるかというと(何か研究結果があるとか?)
わたし自信の経験の結果なのですが。

さて
今月から、セミナー講師の卵さんや
「表現」で悩んでいる方(人から「怖い」と言われるんです~、とおっしゃてました^^)
と一緒に月2回
「声を開発するワークショップ」をすることとなりました。
やることはお芝居の練習みたいなものなんですが。

声は「響き」。
ヴァイオリンがそのボディを響かせて、美しい音色を奏でるように
本来声が出ない人などいない。
人も、「自分本来の声」を美しく鳴り響かせることができて当たり前。
声は、自分の本質と自分をつなぐ、開く回路になり得る。

と、そういう七面倒くさいことは置いておいても
とにかく声を出すのは気持ちのいいものです。
体も心も単純に、とてもヨロコブことだと感じます。
何より自分がそれがとても好きなのです。

どんな「共鳴現象」が起きるのか。
期待に静かに胸を膨らませているところです。

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