「数学の神様」

クライアントさんに

数学の先生をしていらっしゃる方がいます。

わたしは、数学がめっぽう苦手だというセルフイメージを持って今に至ってしまったので

この方とお話をするときには

いろいろな意味で楽しいのです。

数学をこよなく愛し

幼い時から親しみ、なおかつそれを仕事にしている方の

ものの考え方の方法はどんなものだろう

と、自分との差異をふくめ、とても触発されることが多いのです。

補習で問題を解いている生徒さんが

とても「いい表情」をするのだそうです。

問題にあたっているときの表情は、無防備。

ただ集中している。

そして、解けた瞬間、とてもいい表情をする。

心の底から喜びが湧き上がる、そんな顔を、どの生徒さんもするのだそうです。

幼い子どもが

花や、虫や…そんなものを、ただじっと、見つめていることがあります。

世界に、そのものと自分しか存在しないかのような

そんな集中。

ヘンな自意識みたいなものは何もない、ただ無心な表情。

自分にもそんな瞬間があったなあと、かすかな記憶はあるのですが

今、その境地になれといわれてもなかなか。

生徒さんは

数学の問題をとおして、その世界に行っているのだなあとそんなことを思いました。

その方との数学のお話は続きます。

「数学のどんなところが好きなんですか?」と月並みな質問をしてみました。

「数学を学ぶ意味とか…実は、あんまりそういうことは考えたことがないんです。

問題を解く、その感覚がとにかく好きです」

これは…これぞ、真の「好き」な人の言葉かもしれないです。

「問題を解いていて、数学の神様が降りてくることがあります」

と、その方もおっしゃいます。

難しい問題をほおっておくと

夢の中などで、解法が出てきたりするのだそう。

発明家の話で、よくそういうことを聞きますが、本当にあるんですね。

はあ~。一度でいいから出会ってみたかった。数学の神様。

お話を聞きながら

この方の自己表現の方法の一つとして「数学」があるのだなあ、ということや

何かをつきつめ、そのことに一心不乱に取り組む

その「体験」を通じて

人は自分の「スタイル」を

世の中と対峙し、かかわりあっていくための「たくさんのリソース」を

思考方法や、困難を乗り越えるときの方法や…そんな宝を

手に入れるのだと感じたことでした。

そして、それはなんでもかまわない。

スポーツであったり、この方のように「数学」であったり。

ただ、若いうちにその「何かに夢中になって、自分の限界を超えようとぎりぎりまで頑張った」体験を

しておくことが、とても大切なのだなあと。

今、この方を通じて

たくさんの生徒さんたちが

数学という世界の魅力を体験し、無心にその世界を旅する体験をしています。

それは、この方でなければできないことです。

本当に数学が大好きで、そのことに寝る間も惜しんで時間を使い

夜のしじまに「数学の神様」とダンスを踊った、その感動を身体で知っているこの方だからこそ

それを生徒さんに伝えることができるのだろうな、と思います。

「数学は、異世界への入り口です」

そう、静かに、そして昂揚感に満ちた口調でおっしゃるこの方の声を聴きつつ

子どもに私たち大人が本当に伝えないといけないことはきっと

こんなことなんだろうな、と思ったことでした。

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