「深知今日事ーふかくこんにちのことをしるー」

「体罰のゆくえ」

「Coaching―コーチング―」という言葉と出会って約10年。

―人の能力をいかに伸ばすか?―

という点についアンテナが立ってしまい
何を見ても
そういう観点で見てしまうのは職業病です。

病院に行っていても
カフェに行っても
居酒屋に行っても
ダンスのレッスンに行っても
パーティーに行っても

人の動きや、スタッフ間のやり取り、体の動き、気配り等々
醸し出されるている場の「空気」「雰囲気」をつくっている
大きな意味での「コミュニケーション」の流れや
「そうなっている」因果関係を見るのはとても得意です。
そしてしょっちゅう
「いいね!」ですとか「…惜しい!」と
心の中でこぶしを小さく振ったりしています。

近くのグラウンドで夕方
少年チームがサッカーの練習をしていることがあるのですが
走りに行ったついでについ、ぼ~っとみてしまいます。
ここのコーチは
まだ若い方なのですが、とても素敵な教え方をなさる。
一言でいうと
「質問型」指導。

「今、ここにボールが来たよね。どう動いたら一番効果的かな?」

いろいろな意見が出る。
中にはわたしが聞いていても「使えないでしょ」という意見も出るけれど
そこには突っ込まないで「おう」と受け取るコーチ。
まずは「自分の考えを声に出す」癖づけをするのが優先なんですね。

「だよね。じゃあ、そう動いてみて」

実際動いてみて、うまくいかないとまた考えを促すコーチ。
そしてアドバイス。
うまくいったところには
「そうそう!その調子!」

ふうん。
今はこんなふうな指導者が、
つまり「指示、命令、叱責型」ではなく
「コーチング型(質問、承認、アドバイス型)」の指導者が
増えてきているんだなあ…
自分がスポーツの指導をされていたころとは
隔世の感があるなあ、いい時代になったなあ、と
その風景を初めて見てしみじみと思ったのは5年ほど前。
こんな地方の小さなサッカーのチームでも
コーチング型の指導者がいるのだから
こういう指導方法が相当普及してきているのだろう、と思ったのでした。

運動はあまり好きではないので
スポーツのことは全く詳しくないのですが

「『言語技術』がサッカーを変える」 田島幸三  
「日本人を強くする」 岡田武史 白石豊   

これらはわたしにもわかりやすく、興味深く読みました。

「『言語技術』がサッカーを変える」

「ベンチをみないイタリアチーム」
かたや
「フリーズする日本選手たち」
という対照的な話から始まるこの本は
当時日本サッカーの弱さであった「自己決定力」
(究極の状況で一人一人が自ら考えて決定を下す力)

を育成するために、まずはコーチ陣が「言語技術」を伸ばすための
トレーニングを受ける、という内容です。
「考えながらサッカーをする選手」を育てるために
コーチ陣が「考えさせる指導」ができるめの言語技術や概念を学ぶ
その視点や方法はとても参考になるところも多く

「ここは軍隊ではない。わたしは命令などしない」

というオシム監督の言葉とともに
当時、研修先でも視点の一例として
お話させていただいたりしたこともありました。

さて
それからさらに数年がたち
「体罰」という言葉が大きくクローズアップされている今。
今朝なにげなくテレビで紹介されていたアンケート結果を見て驚いたのですが
そのアンケートに答えた選手の8割が「体罰容認」。

(プロ野球選手と東京六大学の選手、約550名からのアンケート結果。
 体罰を「指導者から受けた」中学、高校でそれぞれ5割弱。
「体罰は必要」「ときとして必要」との回答が83%。桑田さんの調査結果でしたか)

とにかく
単純に驚いてしまったのです。

…ぜんぜん、変わってない??

「できない」ときに、怒鳴ったり
ときには殴ったり蹴ったり…という指導(?)が
今も継続しているとは、しかも、結構な数でそれが今も「普通」なのだということに
ほんとうに、とてもとても驚いてしまったのでした。

「コーチ(COACH)」の語源は『馬車』
「その人を、望むところまで連れて行く人」。

コーチとは
目の前の大切な人が、望むところへスムーズに行けるようにサポートする人のこと。
そのための「方法」を数多く持たなければならない、と思います。
指導のためのスキルの「引出し」。
決して、たった一つの「かつてうまくいったやりかた」だけでなく。
「自分がやってもらってうまくいったやり方」の他に。
すべての患者さんに、同じ方法で治療をするお医者さんはいません。
自分に効いた薬をすべての患者さんに処方する人も。

指示も命令も、そしてもちろんときには叱責も必要。
そして?それ以外には??
あなたのコーチとしての「技」は?
「スキル」は何ですか?

その柔軟性がどこまで持てるか。
それは、究極、自分自身のプライドや心理的な「ホメオスタシス」と
どこまで向き合えるか、ということでもあると思うのですが。

そのあたりは
すべてのリーダーに共通の点である気がします。

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