「奥の手を使う」
などと言うときのこの「奥の手」の語源
ご存知ですか?
わたし、今日初めて知りました。
このお寺は秋だけ公開されるという場所で
みなさん、お寺内のこのお堂に座って
切り取られた絵のように見える紅葉を楽しみます。
わたしも
周りの人のように畳に足を投げ出して
ぼんやりと座っていたのですが
ずいぶんと長いこと座っていたので、自然と、お堂の前のほうに安置してある「千手観音像」の
説明を何回も聞くことになってしまいました。
誰が説明をするかといいますと
お客様を乗せてきた人力車の若いお兄さん方が
必ずご案内する項目になっているらしいのですね。
聞くともなしに、いろいろなお兄さん(運転手さん)の個性的な説明が耳にはいってきます。
「これは千手観音です。
頭のの上にモコっとある・・・そうそう、あれ、顔です」
もこっとって…でも確かにそうだよなあ。
「で、後ろにあるば~っと出ている輪っかみたいなの、あれが手です」
そうか・・・手なのか(笑)
「あの手は全部で40本あります」
表現は色々とダイナミックだけど、よく勉強をみなさんしていらしゃるなあ。
「一本あたり、25人、助けることが出来ます!」
へえ、そうなんだ。
「25×40で、1000。それで千手観音」
乗ってきた(人力車に)ペアの中年のお客様も、ほおおう~、とうなずいています。
わたしもひそかに「ほおお~う」(納得)
ここで、彼の声がひときわ大きくなります。
「でもっ!1000でも足りないときって、あるじゃあないですか」
そうか…世の中には苦しんでいる人がたくさんいるものな。
「そんなとき、前からは見えないんですが、後ろのほうに、こんなふうに(彼がどんな動きをしているかは
見ませんでした)…
あと2本、手がついているんですよ。それを使うんです。奥の手。…あの…あの・・・」
「『あの『奥の手』の語源・・・??」(お客様)
「はい!そうです!!」
「ほお~」(お客様)
(わたしも心の中で拍手)
昨日今日と、人力車をたくさん目にします。
思うのですが、あれは本当に大変なお仕事だなあと。
車を常に水平に保ちつつ、走りながら、トークをしながら常に笑顔を絶やさない。
お客様の安全から、快適な旅のサポートからガイド役まで
その気配りに要する力は並大抵のものではないように感じます。
車を走らせていない場面(お客様を各観光ポイントで案内している場面)での
エスコートの挙動も360度目が行き届いていて
なかなかスマートです。
夕方
霊山ミュージアムに続く急な坂の途中で見た人力車は
みな一様に「お客様のほうを向いて」車を引きながら
急な坂道を登っていました。
自動車や観光バスと同じ道を登ってゆくので
坂道を上ってくるそれらに目を光らせながら引いているのです。
1年でもっとも観光客の多い11月の京都。
あがってくる自動車もひっきりなしです。
急な坂道。体重をぐっとかけて車を引きながら
微妙に車を脇に寄せたり元に戻したり…
そして、その作業をしながら
同時に対面する2人の若い女の子(乗客)と笑顔で会話を交わし、軽妙なトークで「笑わせて」いる。
退屈などさせない。
二人の女の子は本当に楽しそうに笑い転げていました。
「すごい…」
一度、人力車夫の新人研修の場面を見てみたい
と、心から思ったのでした。
語源のお話のつもりが
「人力車を引く人たちはすごい」という話になってしまいました。