新しく買った机が家にきたその日に、傷をつけてしまい、
ものすごく落ち込んだ、という話を昔、書いたことがあるのですが。
3ヶ月くらい探してやっと巡り合ったその机は、
カリモクの女性用の家具で、少し背の低いもので、
一目で氣に入り、袖机も一緒に購入しました。
待ちに待った配達の日。
組み立ててもらってさあ部屋へ!という時に
廊下の壁で角を「ザリザリ」と擦ってしまい!
その時のショックといったらなく、
そのまま夕方までふて寝してしまったくらいでした。
…という、懐かしい出来事を久しぶりに思い出したのは、
テレビでこんなものを見たからで。
それは、
外国人が日本に「金継ぎ」を学びにやってくる、という場面。
「西洋だと、壊れたところを完璧に治してわからないようにするのに、
金継ぎは壊れた部分を隠さず、美しく見せるとことがすごい」
とその人。
壊れたものを継ぐ、という作業を、芸術にまで昇華させている「金継ぎ」。
傷があることが、価値を高め、
その器の一個の個性として、器を際立たせている。
http://makezine.jp/blog/2015/08/kintsugi-japanese-art-recognizing-beauty-broken-things.html
その外国人は、その「金継ぎ」の世界観と、
自分自身の人生を重ね合わせ、
日本へやって来た。
「僕はこれまでに会社を10個潰しているんだ」
その上、骨折までしてどん底の時に、
ネットで金継ぎを見つけ、
「壊れても美しく生まれ変わる金継ぎを見て、
自分もまたやれる、と思った」
のだそう。
「傷を修復するだけでなく、
このお皿の中に、美しい風景を作り出してください」
という指導者の言葉に感激しながら、
壊れた器の補正部分にヤスリをかける様子は無心。
やがて、
器の欠けを満月に見立てた、美しい作品を作り上げていました。
それは、世界に一つしかない器。
さて。
私の机なんですが。
空も茜色に染まる頃、やっと起き出して、
ホームセンターへ行き「家具補修の筆ペンセット」を買い、
家に帰って、その小さな傷を丁寧に塗り始め。
色を混ぜ、
確認しながら重ねて塗り、
乾かしてもう一回塗り、
その上に透明なニスを塗り…
とやっているうちに、
この机のことが、愛おしくてたまらなくなっていました(笑)
いえ。
傷がなかった時よりも、
さらに愛着がわくと言いますか。
これはわたしだけの机だ!
と。
「傷こそお前」
「傷こそ個性」
「不完全なところをこそ愛せ」
「傷こそ、愛せ」
そう、娘に言ったのは幸田露伴。
ドラマの中での話です。
この時は、「短所」ってことだなあと思って見ていましたが。
欠点も含め、
これまでの人生で、
何か辛いこと、傷ついたことがあったなら。
それこそが、自分という個性の輝きになっている。
それは、
今のあなたであるために、きっと何か、必要なことだったのだ。
今日もし何か、辛いことがあったなら。
それは必ず、あなたという人間のさらなる輝き、深みのためにあったのだ。
その傷まで含めて、
あなたという人間なのだ。
あなたの魅力は。
あなたの輝きは、
あなたのその深い眼差しは。
あなたの声に満ちる響きは。
その傷があるからこそなのだ。
と。
わたし自身、
今はこの言葉を、そんな風に思うようにしています。
なぜって。
わたしたちは金継ぎを生み出した民族なんですから。