7月は
いろいろな講演やワークショップに顔を出していました。
一つは
怪獣デザイナーで漫画家の西川伸司氏の講演。
ゴジラのデザインも手掛けていらっしゃる方だそうで。
かっこいい。
そしてもう一つは
映像デザイナーの青木裕幸氏のセミナー。
無縁の世界ゆえお名前も存じ上げなかったのですが
お仕事の内容を見ると、あらなんと。
私の好きな「科学大実験」(NHKEテレ)などを作っていらっしゃるとあり。
興味津々で出かけてきました。
西川さんのお話。
「ゴジラVSビオランテ」という映画があって
難航を極めたゴジラの相手役「ビオランテ」のデザインが最後に自分に回ってきた。
西川さんははじめ
ビオランテに顔をつくらなかったのだけど
(ビオランテはもとが植物なのです)
が
上層部の「子どもが怖がる」という意向によりしぶしぶ顔をつくった。
けれど、今思えばやはりそれがよかった。あの頃は若気の至りで
…などなど。
あれでも十分怖かったですが?
当時、ビオランテの絵をもって怖がる弟を追っかけ回していた気も。
あの「ビオランテ」のデザインを、この目の前の方が!
こんなに何枚もデザイン画を描いて、ご苦労なさっていたとは。
青木さん。
のっけから「次の映画の冒頭をご覧ください」。
「12人の怒れる男」
「椿三十郎」
のはじめ1分ほどをそれぞれ見ます。そしておもむろに質問が。
「それぞれ、何カットで撮影されていましたか?」
12人…のほうはカメラを切り替えず、続けて撮っていたのはわかったけれど
椿三十郎は、えっと…10カットくらいかな??
(答えは「12人」~1カット。「椿」~30カット、でしたか)
そこから
カメラアングルについて、
実際に黒沢映画やヒッチコック、スピルバーグなどの映像を見ながら学びます。
面白い。
さて
先の西川さん。
子どものころからずっと怪獣や特撮好きで
「同人誌」という呼び方もないころからゴジラなどのマンガを描いていたそう。
そして大学生となったある日、「それ」はやってきた。
「2人で旅行に行かないか?」(BYお父さん)
西川さん、来た!と思ったそうです。
勉強もせず、マンガを描くことだけに明け暮れている自分。
お父さんからの「引導」があってしかるべき時期です。
けれど
お父さんは、西川さんの話を聞き、言ったのだう。
「大学、辞めていいぞ」
しかしそこには条件が一つ。
「本を一冊作ったらな」
そして西川さんは一冊の本を作りました。
「ゴジラ伝説」というマンガです。
同時にその本こそが、西川さんの「怪獣デザイナー」の道を切り開くものとなったのだそう。
青木さん。
場がすすむにつれ、どんどん声が大きく、というか
違う熱が。
話は「サイコ」を経て2001年宇宙の旅、そしてスターウォーズへと進んでいます。
「この、ミレニアムファルコン、何かに似ていると思いませんか??」
(カブトガニと答えて場を盛り下げてしまいました…)
「この映像の中に、実はミレニアムファルコンが隠れています。どこでしょう?オマージュですね!」
(スイマセン全くわかりません…)
「この、2001年のポスターは、NASAのお抱え絵師が書いたもので!その画集はこちらです(と、分厚い画集)」
(青木さん、目が、目が輝いています)
何でしょう。
この「好き好きオーラ」は!
門外漢。まったくの異世界のことゆえ、青木さんの質問の半分も言い当てることもできないのですが
でも、なんだろう、この楽しさは。
無性に楽しい。
セミナー終了後
近くへいき、資料として持っていらした雑誌や画集を見せていただきました。
その中の一冊。
特撮の専門雑誌。古いのは一目でわかるのですが
でも、とても状態がよく、きれいに保存されている。
「これは、いつ頃買ったのですか?」
「これは、中学の時です」
そうか…そうなんだな。
この人も「手放さなかった人」なのだ。
幼き日、出会った世界の衝撃を。
若き日、家族の寝静まった夜更け。
自らの心臓の音が聞こえるくらに静かな夜のしじまに、どっぷりと浸り、夢中になって思い駆け巡らせた
あの瞬間を。
忘れることができなかったのだな。
手放すことができなかったのだな。
とても遠い日
自分にも確かにあったあの時へ、あの感覚へ
くらっと一瞬、タイムスリップした気がしました。
デザイン。
映像の構成。
これらは、セミナーをつくるときにも、とても役立ちます。
「人に見せ、人を魅了し、人を巻き込み、感動をつくる」ものですから。
そのリズムや視点を磨き、鍛えるという点において、大いに役立ちます。
そんな思いもあって、参加した講演であり、セミナーだったのですが
そんな、内容への興味を超えて、
今回もっとも心に残ったのは、このお二人の存在自体、ということになりました。
「それ」を手離さず。
もっとも味わっていたい音色を。
もっとも自分らしくいられる、自分を自分たらしめてくれるそのリズムを
自分の人生の中心に置き
そして今に至るお二人。
そんなお二人が歩んでこられた人生のプロセスそのものに
たくさんの元気をもらった気がしたのでした。