「深知今日事ーふかくこんにちのことをしるー」

「型に宿るこころ Ⅱ」

 

 

先日「居合いを見に行った」

という話を書きましたけれど

 

そのあと、皆さん剣道をしているという「剣道一家」の知人に

流派のこと、道場のこと、いろいろと聞いてみたのです。

 

すると

とても丁寧な答えをくださり

そのご一家の剣道に対する思いを感じることができたのでした。

その「お答え」の中で、一番興味深かったのが「道場を選ぶポイント」でした。

 

『「うちの道場は強いですよ」

 

と自慢する道場と

 

「うちの道場に来ても勝てませんよ」

 

と言う道場があります。そのときは

 

「勝てませんよ」と言われる道場をおすすめします』

 

その方が実際体験なさったのは

「うちは強い!」と言っていた道場に、立ち上がって一年目の道場が

立ち会い、「トロフィーをかっさらってきた」現象だったそうです。

 

違いは「型」。

立ち上がったばかりの道場の子どもたちが経験豊富な子に負けていないものがただひとつ。

それが「型」だったそうで。

習いたての美しい、崩れていないきちんとした「型」。

とにかく「型」は大事らしい。

 

たとえば

この方のお子さんは小柄なんですが(かわいらしい女の子です)

とてもきれいな「型」だと、どこの道場でもクラブでも褒められるそうです。

体が小さいので勝てないけれど

でも、相手にも勝たせない、取らせないという剣道をするそうです。

型がしっかりしている分、人より早い「二段うち」ができるそうで。

 

その方の話は続きます。

「その、うちの道場も『勝てればよい』という剣道になった途端『勝てなく』なりました」

崩れだしたのだそうです。子どもたちの型が。

 

そしてそのころには

子どもたち、保護者も含め「礼儀がなっていない」とあちこちの大会で

「お叱り」を受けることが多くなっていたそうです。

 

つまり

「うちの道場は勝てませんよ」と言うところは

 

「勝ち負けより型や精神をとても大切にしている。

なので『勝てる練習』をしなくても

型と精神が備わってくるので自然と勝てる」

 

ということなのだそうです。

 

「傲りが出れば、型も崩れ、心もすさむ…いやというほど見てきました」

 

「一番の敵はわが心にあり。

子どもも、勝てない自分を悲観したこともありましたが

『型のない汚い剣道で勝てても無様なだけ

それならきれいな型で堂々と負けてこい』

という主人の言葉を大切にしています」

 

…かっこいい。

 

これぞ日本人。

これぞ武士^^

 

型って

きっと、体に染みこんで、その人の心映えやあり方を作っていく

大切な要素なんですよね。

頭ではない、体に染みこんだ「あり方」。

何かがあった時に、一番に表出するのは「付け焼刃」のあれこれじゃない。

 

そういえば思い出したんですが

市川海老蔵

ある番組に、それはそれは惰気にあふれた格好でお出になっていて^^

たらたらと街を歩くんですが

食事の場面、お箸を握った瞬間

くっ…と背筋が伸びて、それはそれは美しいお箸使いでした。

別人。

 

瞬間、彼の中にある「核」のようなものを見た気がしました。

 

自分の中は何か、そういうものが…

先人たちから脈々と受け継いだ「何か」が、ちゃんと息づいているんだろうか?

と思います。

 

そして

それをやはり、確実に、次の世代に伝えていかなければならない、と思っています。

 

 

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