鹿児島で古くから活動していらっしゃる
白鳥バレエの60周年記念公演に行ってきました。
これまでも
「ヤマトタケル」
「邪馬台」と
日本古来の題材を創作バレエとして演じてこられたのだそうですが
今回は
「平家物語」
頭の中にある平家物語に関する知識をひっぱり出し、思い起こしつつ
会場へ向かいます。
どんなふうに「平家物語」の世界がバレエで再現されるのだろう、とワクワクしつつ
知人が出演しているので、お花などを預け
中へ。
実は…バレエを「全○幕」という形でしっかりと鑑賞したことがこれまでない私。
歌舞伎のときは途中でちょっとだけ寝てしまったしな…などなど
(まあ、歌舞伎は「半日」ですから)
これまでの自分のもろもろの鑑賞歴を思い出したりしつつ
幕の上がるのを待ちます。
さて
始まってみると、あっという間にすぎた「全三幕」でした。
すっかり平家一門の栄華と凋落の世界に引き込まれて帰ってきたのでした。
内容もなのですが、見ていてしみじみと感じたことは
周りで踊るたくさんの人たちあっての舞台だなあということでした。
主役級の方々はもちろん素敵なのですが
周りの人たちがあってこそ、「場」ができている。
平家の栄華の世も、戦乱の世の不穏な空気も
平家一門が身投げしていく壇ノ浦のみな底の哀しさも・・・たくさんの踊り手あってこそ創ることができる空間で
また、その一人の踊り手さんが
お一人お一人、ものすごく「民衆」だったり「海」だったり「女官」だったりするんです。
完璧に、心から一人ひとりがその役割を果たしている。
舞台の、どんな端っこの人も、全身全霊でそこにいらっしゃる。
その「何か、伝わってくる大勢の人の力」に圧倒されたことでした。
なので、実は幕が開いた直後からなんだか「目に涙」…(早すぎますよね^^)
それからもうひとつ
主役の建礼門院徳子を、一幕とニ幕は若い方が
ラストの三幕のみを、この舞台で引退なさる70歳のプリマの方が踊られたのです。
動きが激しくて華やかな「大技」がふんだんに見られるのはどう見ても一幕とニ幕で
三幕目の主役はあまり動きがないのですが
でも…
一番徳子の「思い」が伝わってきたのは
三幕目でした。
あれは、何なのでしょうね。
舞台に立って、両手を広げ、あごを45度に持ち上げて立っている
それだけで、客席の隅々にまで、その方の「感謝」や「慈愛」のまなざしが
ずわあ~っと、広がっていくんですよね…。
同じ、手を動かすにしても、その動かした手によってかき乱される周囲の空気の質が
違うんです。
技術はとても大切で、でも、やっぱりそれだけではないところで
人の中に深く伝わっていくんだなと感じたことでした。
なんだか
とても触発されて帰ってきたことでした。